見積書とは何だ?作成する意味と法的な効力

見積書というのは、多くの新社会人にとって最初に目にするビジネス文書でありながら、結局のところなんだかよく分からない存在でもあります。
私は、契約には必ず契約書を作成する会社に新入社員として入社したため、見積書がなくても、契約書があれば、契約は有効に成立しますので、何のために見積書を作成するだかよく分かりませんでした。同じように、習慣だから、で納得している人も多いのではないでしょうか。
見積書はどのように使われるのか
見積書について理解するためには、見積書が受け取った相手方にどのように使われるのか、を理解するのが一番の近道ではないかを思います。
多くの会社では、契約を行う前に、社内で上司等決められる権限のある人に案件を説明し、承認を取っておくことが行われます。
この承認を、稟議という形で、紙(や最近ではデータ)に残しておくことも珍しくありません。
その承認に当たって、条件を確認するために、見積書が用いられます。
一例として、何らかのシステムの導入を検討しているとします。
お金がかかる話であれば、一担当者の判断ではなく、会社として導入を承認する必要があります。
その際、必要なスペックはこれだけ、かかるお金はこれだけなので導入したい、という稟議を作成して社内で承認することになりますが、その根拠として、このような見積書を受け取っており、この金額でこのスペックが用意できるのです、と説明することになるわけです。
つまり、見積書の一番の使い道は、社内での説明用、です。
見積書の持つ法的な意味
ところで、見積書は法的にどのような意味があるか、というと、これは一般には、契約の申し込みに当たります。
契約は両当事者の意思の合致で成立する、と言われますが、申し込みに対して、承諾があれば契約が成立します。
つまり、見積書(申込み)と承諾(発注書など)があれば、契約書がなくても契約が成立する、ということです。
実際に契約書が作成されないケースも、珍しくありません。
実務上は、契約書が作成された場合に比べて、見積書と発注書で契約を成立させている場合の方が、後から間違ってました、と言いやすいです。
相手方から、一旦契約しちゃったんだからその通りやってよ、と言われる可能性が低い、という意味です。
しかし、法的には、契約書を結んだ場合と同じように、相手から請求される可能性があるということでもあります。
これを避けるため、見積書に、正式な契約は契約書を持って行い、見積書には法的な効力はありません、と明記される場合もあります。
また、後から契約書を作ることを前提としない場合、一旦、見積書を発行すると、取り消すまではその見積書が有効になってしまいます。
相手方が少し考えさせてよ、と言って、そのまま時間が経ち、何年もしてから、あの見積書の条件でお願い、と言われるとその条件で契約が成立してしまう可能性がある、ということです。
これを避けるため、見積書には、見積もりの有効期間(発行後3か月が有効期間です、など)が記載される場合もあります。
見積書は正確性がことさら大事
ビジネス文書は、見積書に限らず、正確であることが重要です。
これは、文書にミスがあると、信頼が一気に下がってしまうこととなりかねないためです。
しかし、ビジネス文書の中でも、見積書は特に正確性が大事な文書と言えます。
相手方は見積書を前提に社内での承認を行ってしまいますし(後から見積書が間違っていたということになれば、相手方の担当者が社内で嘘の説明をした、と言われかねません)、また見積書の条件で契約が成立してしまう可能性もあるからです。