時候の挨拶を本文の前に置く3つの理由

多くの事柄で、前か、後か、というのは重要な判断ポイントです。
日本国内で販売されている車は、前輪駆動車が大半ですが、エンジンも前に積んでいます(フロントのボンネットを開けるとエンジンが載っています)。
車の設計をする際、この前にエンジンを載せるのか、車の後方にエンジンを載せるのか、が最初に判断するポイントになることは、車の開発をしたことがなくても理解できるのではないでしょうか。
また、話は変わりますが、子供のオムツというのは、特に男の子用の場合、前後を間違えると大変なことになります。
おしっこを受け止める吸水ポリマーが多くある方を前にしないと、漏れてしまう可能性が高くなるからです(余談ですが、オムツは前後を間違えないように様々な工夫が凝らされていますし、はっきりと「こちらが前!」と書いてあるものが多いですが、ズボンはそうでもなく、履かせる際によく迷いますよね)。
ビジネス文書で、時候の挨拶を記載する際にも、その挨拶を本文の前に置くのか、後に置くのかを、一番最初に決める必要があります。
時候の挨拶は「前」が基本
国内の市販車の例と同じく、時候の挨拶についても、本文の前、もっとはっきり言えば、最初に書かれることが大半です。
時候の挨拶を本文の前に置く利点は大きく3つ挙げることができます。
1. 時候の挨拶がクッションになる
時候の挨拶を本文を始める前に置くことで、こちらの話を聞いてもらうためのウォーミングアップ、クッションのようなものとすることができます。
通常、時候の挨拶を言いたくてビジネス文書を作成することはないため、さらっと読み飛ばしてもらえる本文の前が、定番の置き場所になっている、ということです。
2. 間違えても問題が少ない
前項と重なる部分もありますが、時候の挨拶を間違えた場合、文末におかれていると、決定的な問題となりかねません。
何故なら、人は直近の話ほど、文書であれば最後に書かれていることほど良く覚えているので、最後だと記憶に残りやすいからです。
時候の挨拶で他人との差別化を図れるほど、破壊力のある文案を考えられる、あるいはその自信がある場合を除き、最後に置くことはリスクでしかありません。
3. 文末の時候の挨拶は難易度が高い
例え、間違いではなくても、何のためにそこで時候の挨拶を記載するのか、を考えると、最後に書くことは難易度が高いです。
これを次項で具体例を交えてご説明します。
文末における時候の挨拶
ビジネス文書は、本文が最も伝えたいことになります。
しかし、伝えたいことを伝えるだけでは、味気ないため、最後の文章、いわゆる締めの文章が必要になります。
ポイントは、締めの文章は、余韻を残す程度のさらっと読める文章が望ましいということです。
ところが、時候の挨拶というのは、さらっと読むには、少し情報量のある事柄なのです。
そのため、時候の挨拶が、何らかのアクションとセットになっているのであれば、あまり問題になりません。
例えば、本社移転の挨拶において、移転先を本文で記載した上で、最後に
のように、暖かくなってきた、から、ついでの往訪もありですよね、という文脈なら違和感ありません。
このアクションがない場合、本社移転の挨拶に引き続き、
と書いた場合、だからなんなんだ、ということになりますよね、ということです。